オニヒトデの幼生はサンゴ由来の有機物を食べることができる

オニヒトデはサンゴを食べることで有名です.

しかし大発生するとサンゴ礁が壊滅的になるほどサンゴを食い尽くすことがあります.

困ったことに最近,大発生する頻度が増えています.

そこで世界中のオニヒトデ研究者は,大発生の原因を探って必死に研究を続けています.

なかでもオーストラリアと日本の研究チームがリードして研究を展開しているようです.

オニヒトデが大発生する要因にはいくつかの説がありますが, 1つ有力なのは幼生サバイバル説です.

オニヒトデが産んだ卵は孵化すると, 水の中をフワフワと浮遊する幼生(赤ちゃん) になります.

そのほとんどは幼生の間に捕食されたり餌が少なくなって死んでしまい, サバイバルしてわずかに生き残ったやつが大人になると言われています.

しかし幼生の生き残り率(サバイバル率)が上がったらどうでしょう?

今まで赤ちゃんの時に1万匹死んでいたのが, 1万匹生き残って大人になったらエライこっちゃです.

これまでの研究で,サンゴ礁がちょっと富栄養化して, 幼生の餌になる植物プランクトンが増えたから幼生のサバイバル率が 上がったんじゃないかと考えられています.

しかし,植物プランクトンがちょー少ない海水のサンゴ礁でも オニヒトデが大量発生することがあります.

だから植物プランクトン以外の餌も食べている可能性を指摘する声は 古くからありました.

ちなみに,オニヒトデはサンゴを食べることで有名ですが, 赤ちゃん(幼生)のときはサンゴを食べません.

水中を浮遊する幼生はもっぱら植物プランクトンを食べていますし, 浮遊する時期が終わって,海底におりてくる子供の頃はサンゴモという藻類を食べています.

オニヒトデのビピンナリア幼生(Photo credit: K. Okaji)

この研究は,オニヒトデの幼生が,サンゴだ出す有機物を食べることが出来ることを 実験で示しました.

安定同位体法という方法を使いました.

簡単なイメージで言うと,サンゴにマーカー(絵の具でいう赤色みたいな感じ) を食べさせて,サンゴが放出する有機物(粘液)が赤くなるようにして, 今度はそれと一緒にオニヒトデ幼生を飼育して,幼生の筋肉まで赤く染まったから, 幼生はサンゴ有機物を食べて実際に消化して吸収したんですね,という解釈になります.

つまり幼生は植物プランクトン以外のものも食べることが出来るわけです.

植物プランクトンがたくさんなくても少なくとも生き残れるわけですから, これまで考えられていなかった別の餌を食べて植物プランクトンが少ない時期や 場所をやり過ごしている可能性もあります.

これからのさらなる研究の発展に期待です!

 Nakajima R, Nakatomi N, Kurihara H, Fox M, Smith J, Okaji K (2016) Crown-of-thorns starfish larvae can feed on organic matter released from coralsDiversity 8: 18.