論文の書き方

研究することと,論文を書くことは全く別ものだ. 研究は楽しいし,準備や,実際にフィールドに行ってるときはとても楽しい. 分析はあまり好きではないが,やっつけ仕事みたいなものだ.

でもジャーナル(科学雑誌)に投稿する論文は違う. 夏休みの宿題レポートのようにやっつけではできない. 作家になったように,机に張り付いて,考えて, ストーリー(物語)を書かないといけない.

時間もないし,正直つらい.筆も進まない... しかも,論文は,雑誌にめでたく掲載されたら, 自分が寿命をむかえてもう見ることなくなっても, これから何世紀も,図書館とオンラインの世界に残っていく.

だからテキトウには書けない. しかし,いつも効率よく書きたいとは思うがなかなかそうはいかない.

ここでは少しでも効率がよくなるように執筆の流れを整理してみた. 以下の①から⑤をぐるぐるまわしていく感じ.

①イントロダクションを書く

まず,最初はなんとなくでいいので, 目的と,この研究をするに至った背景,理由,きっかけを箇条書きで書いてみます. 箇条書きで書いたことを,さらに詳しく書いていきます(太くする).

次に,箇条書きで書いたものをつなげて,文章にしてみます.

さらに,持っているデータが小さかろうが, 自分でも少々データがしょぼいと思っていようが(正直だ), 遠慮なく大きな目的とビジョンを持ってイントロを書きます. 読み手が面白いと思うように書きます.

イントロは,流れがとても大切なので, 大きなことからブレイクダウンして最後の目的に到達するように書きます. とにかくポイントは,目的を明確に書くことです.

そして,その目的をもとに, なんで,この目的を設定したのか,自問して,その理由を書いていきます. 目的を設定した理由を書けば,じゃあ,なんでそいういう研究が必要になったのか, その背景を,もっと掘り下げていきます.

「過去に研究がなかったからやってみた」は,ダメなパターンです.

過去に研究がない,という事実は書いても良いけど, それが目的を設定した理由になってはいけません.

②材料と方法(マトメソ)を書く

実験中に書きます. もしくは,実験が終わったらすぐに書きます. 論文って,研究が終わってから,数年後に出ることが多くて(すいません), メモしていない,細かいことは忘れてしまうことが多いです.

忘れる前に!書きます.

だから論文を書くように,もう過去形で,実験中にやっていることを書いていきます.

自分宛のメールにベタうちでも良いです.分析の待ち時間にもかけます.

ほとんどの科学論文は英語で出版されますが,ボクは英語で考えるのが苦手なので, 最初のラフな原稿は,ラフな日本語で書いています.

でもその時点で,日本語のてにおは(文法)は無視します.

あとで,英訳するので,日本語を直しても無意味だからです.

⑤結果を書く

結果は一番,いやなところです.退屈だからです.

まず,分かったことを箇条書きしていきます. つまらないことでもいいので,なんでも,箇条書きしてみます.

データをいれているエクセルは,1つの研究につき,ひとつのエクセルにします.

何個もエクセルがあると,見比べるのが面倒だからです.

結果で一番大切なことは,パターン(傾向)を見つけることです.

高かったのか,低かったのか,なにと関係があったのか. すべて統計処理をして,みていきます. 統計処理はめんどくさいです.

それでも毎回,めんどくさくてもP値を調べます.

統計の度に,別に統計ソフトを立ち上げて使うのはめんどくさいので, エクセルにアドインできる統計ソフトが便利です.

そうすると,エクセル上で統計処理が出来てしまいます.

私もつかっているアドインソフトはこれです. もうVersion4になりました.オススメです.

結果を鉛筆で紙に書いてみます.

すると頭が整理されます.

紙に書いて,ながめます. つながりはあるか?パターンはないか?

ラフなグラフ(Figures)や表(Table)も,エクセル上につくってしまいます.

最初はラフな図を画いて,カレイダグラフとイラストレーターなどで キレイな図を作るのはなるべく最後の方にやります.

結果をやたらめったら,なんでも詳しく書いていると, 非常に長くなってしまいます.

読む方もつらい. なので論文の審査(査読)に,通りやすいように結果はとてもシンプルに書きます.

ポイントは,表と図をうまく使うことです. P値などは,基本ほとんど表にいれてしまいます.

結果には,言いたいことの最低限だけを書きます.

あとで考察につながるところだけ,シンプルに第三者の視点で書きます. だらだらと書くのが一番よくありません.

④考察を書く

次に,結果の箇条書きから言えることを,箇条書きしていきます.

考察は,とにかく書けるだけ書いてあとで修正/削除します.

文献読んで,参考になりそうなところ,気づいたこと, などの,知識を書き込んでいきます.

これらの書いていったことを,混ぜ合わせていきます. 考察に何を書いてイイか分からない?

それは文献を読み込めていないからです. とりあえず関連する文献を,かたっぱしから読んでいきます.

調べて気づいたことをメモ代わりに書き込みます. おのずと,書くべきことが見えてきます.

過去の研究とのつながり,パターンなどを探します.

文章に引用をいれるときは,すかさずMendeley(またはEndnote)を使います.

あとで引用文献を探していれていくのは苦痛です. Mendeleyは無料なのでオススメです.

しかし,論文のPDFをじゃんじゃんいれるとすぐに無料の容量一杯になってします.

なので,ポイントは,Mendeleyに,PDFをいれないことです.

では,どうするかというと,Google scholarのCite(引用)から, 読み込みたい論文のファイルをダウンロードし, これを直接Mendeleyにドラッグアンドドロップして読み込みます.

読み込んだのは,論文のタイトル情報だけなので,数キロバイトですみます.

Mendeleyは,引用文献のスタイルも,雑誌にあわせて生成してくれるので, とっても楽です.

たまに対応していないジャーナルがあるので, その場合はEndnoteのほうが良いかもしれません.

⑤文献を調べる

とにかく,類似している研究をレビューします.

Google scholarで徹底的に調べます. 1つ見つけたら,それを引用している文献を洗い出します.

いろんなキーワードで検索してみます.意外と自分が使わないキーワードで, 関連する研究が見つかることが多いです.

こういう文献が欲しかった! というどんぴしゃがなかなか見つからなかったりします.

Google scholarだけで探していると見つからないことがよくあります.

普通のGoogle検索もするべし. PDFをダウンロードします.名前をつけて, 新規に作ったフォルダに入れていきます.

文献は,まず「読む」. 読んで気づいたこと,パクれそうな文章(の書き方), 気に入った英文などを,考察の欄にメモしていきます.

本にも大事なことが書いてあるし,一般的な情報を入手しやすいです.

あまり詳しくない分野なら本やレビューを読むべきです. 日本語の本も大いに参考になります.