深海

日本周辺の深海化学合成生態系における重要なエリアの抽出

深海化学合成生態系は,海底から噴出あるいは湧き出す還元化学物質
(メタンや硫化水素)を使ってエネルギーを作り出す化学合成バクテリアから始まる
特殊な生態系です.

そこに生息する動物の多くは,そのエリアの固有な種ばかりです.
これから人類は深海に資源を求めて開発を進めていく計画ですが,
そのような開発によって生物が絶滅するようなことは未然に防がないと行けません.

そのためには深海に保護区を設定する必要があります.
保護区を科学的根拠に基づいて決めるためには,どのような種がどこにいるか,
といった種の多様性や生物群集の生物地理をを明らかにしてやる必要があります.

今回,私の研究チームは,日本周辺の深海化学合成42サイトを対象に,
そこに生息する全155種の底生動物(節足,環形,腹足類)の在不在データを収集し,
155種の少なくとも1個体群を,もっとも少ないサイトで保全するには,
どこを選べば良いかを相補性解析を用いて解析しました.

この研究から,種数(=種の多様性)は,相模湾の初島沖(湧水域)と
沖縄トラフの熱水域で高いことがわかりました.
固有種は,42サイトのうち19サイトで,
そこにしか記録のない固有種が見つかっています.
またメタン濃度と種数の関係を見ると有意な正の相関が見られました.
エネルギーの豊富な場所ではそれだけ種の多様性が増すのかも知れません.

化学合成生物群集の群集構造の類似性を調べると,
地理的にくっきりと8つのグループに分かれ,
このグループ分けは水深と緯度で説明することができました.

つまり地理的に離れたエリア毎に固有のグループがあり,
グループとグループの間では動物の交流はあまりないと考えられます.
だから保護区を設定するには各グループ毎に保護区を設定する必要があると
研究チームは考えました.

相補性解析の結果,少なくとも155種を全部保全するという意味では,
42サイトのうち30サイトは保全しないと生物多様性が維持できないことが分かりました.
つまり,ここで示れた30サイトを保全すれば,理論上,
155種のうち少なくとも1個体群を保全が可能になります.

Nakajima R, Yamakita T, Watanabe H, Fujikura K, Tanaka K, Yamamoto H, Shirayama Y (2014) Species richness and community structure of benthic macrofauna and megafauna in the deep-sea chemosynthetic ecosystems around the Japanese Archipelago: an attempt to identify priority areas for conservation. Diversity and Distributions, 20, 1160-1172.

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