サンゴ礁のスカベンジャーは誰?

スカベンジャー(Scavenger)とは,日本語で腐肉食動物と訳され, 死体を喰う,いわゆる掃除屋です.

スカベンジャーには,魚類のように大きなサイズのものから小型の甲殻類まで 様々な動物群が含まれます.

中でも小型のスカベンジャーは魚類でも見つけられないような死体でも 素早く見つけて処理していると考えられます.

一般にスカベンジャーの採集には餌(死肉)をいれた罠(トラップ)を使います.

温帯域や寒帯域での報告からは,端脚類の仲間が主要なスカベンジャーとして 知られています.

サンゴ礁の魚類の死亡原因はもっぱら捕食によるものと考えられていますが, 実は捕食者を取り除いた実験で明らかになったことは, 病気などで結構パラパラと死んでいることです.

しかし,サンゴ礁では毎日ダイビングしていても魚類の死体に出会うことは そう滅多にありません.

死んだらすぐにスカベンジャーによって見つけられて 食べられてしまうからです.

ではサンゴ礁にいるスカベンジャーの正体はなんでしょうか?

魚類スカベンジャーとしては,ウツボなどが知られています.

小型の甲殻類スカベンジャーではどうでしょうか.

これを確かめるために,マレーシア・ビドン島のサンゴ礁で餌トラップをしかけて スカベンジャーの採集を行いました.

餌となる生魚をスライスして,肉をナイロンメッシュ(目合い100 μm)に包みます.

これをプラスチック容器にいれてサンゴ礁の海底に沈めます.

容器の蓋には直径1-2 mmの穴があいており, スカベンジャーが餌につられてこの穴から入ってくる仕組みです.

餌をいれない容器も用意して,餌トラップと一緒に沈めます.

夕方に沈めて翌朝にとりだしてみると.. いますいます.

等脚類(シロラナ属)と数種類の介形類が サンゴ礁のスカベンジャーとして採集されました.

中でもシロラナ属の等脚類は圧倒的に数が多く, これがマレーシアのサンゴ礁ではスカベンジャーとして物質循環に相当度寄与している ことが予想されます.

彼らによる死肉処理速度や生物量などが今後気になるところです.

Nakajima R, Yoshida T, Azman B.A.R, Yamazaki H, Toda T, Othman B. H. R, Zaleha K, Effendy A.W.M. (2013) A preliminary study of small scavenging crustaceans collected by baited traps in a coral reef of Bidong Island, Malaysia. Malaysian Journal of Science. 32(2): 59-66.